読書

【正義の教室】読んでみた。ラストがある意味、衝撃。

2022年5月8日(日)

皆さんの周りに、他人を批判したり、これでもかってくらい攻撃しちゃう人っていますか?

私の職場には…いるんですよね~、そういう人。割と多くいます。

10年前までは、そういう人も限られた数しかいなかったと思うのですが、最近は特に多いですよね。

いろんな思想を発信しやすくなったこと自体は、とてもいいことだと思うのですが、過剰なまでの攻撃は見てるだけでもちょっと…って思います。

そして一番違和感を感じるのが、みんな自分の意見が「正義」だと思っているところ。

これじゃ、争いも起きますよね。

じゃぁ、そもそも正義って何なんだ?って思ってたところ、目に留まったこの本のタイトル。

そして、気になった帯のコメント「30人の幼児と、自分の娘、どっちを助ける?」

GW最終日の休日に、この究極の問いに対する答えを知りたくて考えたくて、思わずkindleをぽちった私でした。

結構面白くてすらすら読めたので紹介したいと思います。

正義の教室 内容と感想

10数年前に流行った、マイケルサンデルさんの「ハーバード白熱教室の講義」や「これからの正義の話をしよう」などありましたよね。

そこでは、「1人を助けるか、5人を助けるか」という、課題だったような記憶がありますが、今回は「30人の幼児と自分の娘」と、さらにエスカレートした難問となっております。

本の概要

【プロローグ】

ある消防士の男の話。消防士の娘が火曜保育園が火事になる。現場に駆け付けた男には、泣き叫ぶ幼児の声(30人)と、「パパ―」と泣き叫ぶ自分の娘の声が聞こえてくる。

どちらを助ければいいのか、消防士として教えられた「家族は後回し」という言葉を守るか、でも何回考えても娘を助けたいという親心、究極の選択の答えは明かさないまま、プロローグは終わる。

【生徒会長 正義(まさよし)と、各々の正義観を持った3人の生徒会役員】

舞台は私立高校。数年前にいじめによる自殺があったから、校内に監視カメラを設置した高校。
そこで、売店に売られている焼きそばパンをせどりしている高校生の是非を問う裁判チックなものが生徒会で開かれる。

最上千幸:会計、功利主義。正義の幼馴染 
「最大多数の最大幸福を信条としており、あらゆることにハッピーポイントを計算し、その合計ポイントが高い方を正義と考える」

リバティ・自由・フリーダム:書記・自由主義・帰国子女
自由は人間に与えられた権利であり、それを守るものが正義でそれを侵すものが悪と考える。自由に固執し自由を阻害するものには徹底的に攻撃する。

・徳川倫理:副会長・直感主義・会長
絵にかいたような優等生で、平等や自由よりも美徳(正義らしい行い)を求める女の子。家族の過去に胸を痛めている。

本の見どころ

ソクラテス、プラトン、キルケゴール、ベンサム、ニーチェ、ロールズ、フーコーetcなど
哲学者たちは「正義」についてどう考えたのか。

異なる正義を持つ3人の女子高生のかけあいから「正義」の正体があぶりだされる

おすすめの理由

おすすめの理由は3つあります。

1:ストーリ―仕立てで読みやすい

哲学というと、どこか敬遠してしまいそうな難しいイメージがありますが、この本だとライトノベル調なので、哲学初心者の私でも入りやすかったです。

ストーリー自体はめちゃ面白かったです。

今まで知らなかった哲学者についても知ることができたことも良かったですね。

2:何となく自分でも感じていたことを上手く言語化してくれている。

正義にもいろいろある、と自分でも思っていたことを、自由主義や功利主義を例に出してうまく説明してくれています。

じゃぁ、どれが本物の正義なんだというところにもちゃんと答えが出ていて、私の納得する答えでした。

3:プロローグの消防士の選択の話が、あるポイントで繋がっていて感動した。

監視カメラの話や、プロローグの消防士のお話、焼きそばパンのお話など、いろんなモチーフがちりばめられていましたが、最後に近づくにつれ、一つ一つ解明されていき、あぁ!そうだったんだと思わず声に出してました。

ラストの展開

この本のラストは、哲学とはあんまり関係ないですが、ストーリーとしては意外で面白かったです。

そんな展開!!とびっくりすること間違いなしです。

読んでのお楽しみですね。

読んでみての感想

最近は「正義中毒」というように、自分の物差しで他人を裁いてしまう人が多いですよね~。

でも、実は正義にもいろいろあって、異なる考えの人の気持ち・立場になって考えるということがとても大切なんじゃないかと、この本を読んでいて感じました。

結局、思想は変わらないし変われない。

みんなが気持ちよく生きるためには、理解まではできないかもしれないけれど、想像力を働かせ相手の立場になって考える、ってことが必要だと思いました。

私のつたない説明では、この本の魅力を20%くらいしか表現できてませんが、珠玉の名言などがちりばめられている本なので、「正義ってなんだろう」と疑問に思っている方には、とてもいい本だと思いますよ。

ぜひ!

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